医療現場において、近年注目を集めている技術の一つにAR技術があります。AR技術は、現実世界にデジタル情報を重ねて表示する技術で、医療従事者や患者にとって様々なメリットをもたらす可能性があるとされ今後ますますの普及が期待されています。
この記事ではARの医療における活かし方や実際にどのように活用されているのかをご紹介します。
ARとは
ARとは「Augmented Reality」（拡張現実）の略で、現実世界にデジタル情報を重ねて表示する技術です。スマートフォンやタブレット、専用のゴーグルなどのデバイスを用いて、現実世界とデジタル世界を融合させることができます。
AR技術は、教育やエンターテイメント、ビジネスなど幅広い分野で活用されています。例えば、教育現場では、教科書にAR技術を組み合わせることで、立体的な映像や解説を表示することができます。そしてエンターテイメント分野では、ARゲームやARライブなど、現実世界とデジタル世界を融合させた新しい体験を提供することができます。ビジネス分野においては、製品の設計や製造、メンテナンスなどにAR技術を活用することで、作業効率の向上やコスト削減などが期待できます。
ARのメリット
AR技術を使うメリットをご紹介します。
- 直感的な操作性: 現実世界に情報を重ねて表示するため、直感的に操作することができます。
- 情報量の増加: 現実世界だけでは得られない情報を提供することができます。
- 作業効率の向上: 作業手順や情報を視覚的に提示することで、作業効率を向上させることができます。
- コスト削減: 資料や教材などのコストを削減できます。
ARを医療業界へ活用する方法
AR技術は、医療業界にも様々な形で活用することができます。
医療従事者向け
- 手術支援：手術中に患者のCTやMRIなどの画像データをARで表示することで、手術部位を正確に把握することができます。
- 研修・教育：AR技術を用いたシミュレーションで、医療従事者は安全かつ効率的にスキルを習得することができます。
- 遠隔医療：AR技術を用いることで、遠隔地にいる医師が患者の状態をリアルタイムで確認することができます。
患者向け
- 治療の説明：AR技術を用いることで、患者は治療内容やリスクなどをより理解しやすくなります。
- リハビリテーション：AR技術を用いたゲームや運動プログラムで、患者は楽しみながらリハビリテーションを行うことができます。
- 疼痛管理：AR技術を用いることで、患者は痛みを視覚化し、管理することができます。
ARを医療業界に活用するメリット
ARを医療業界に活用することによって得られるメリットは次の通りです。
- 診断と治療計画の改善
- 医療従事者や学生のトレーニング
- 手術サポート
診断と治療計画の改善
ARは、医療診断と治療計画の精度と効率を大幅に向上させてくれます。
CTスキャンやMRIの結果を3D表示し、人体の特定の部分を強調表示することで、医師が病状をより詳細に理解し、より適切な治療計画が立てられます。
また、神経外科医はARを使用して患者の脳の詳細な3Dイメージを視覚化し、手術前の計画と手術を改善することができます。
患者の脳内の病変部位を正確に把握し、位置関係を3Dで視覚化することでより正確な手術計画を立て、手術の制度が向上します。
他に、複雑な病状や手術の説明にもARは役立ちます。3Dイメージを用いることで、患者自身が自分の病状を理解しやすくなり、治療計画に対する信頼も高まることが期待されます。
患者と医師の間のコミュニケーションが向上し、治療への理解と協力が得られるでしょう。
医療教育とトレーニング
ARは医療教育とトレーニングにも役立ちます。医学生はARを使用して解剖学を学び、実際の患者ではなくバーチャルな患者を使って手術を体験できます。これにより、学生はリスクなしにスキルを磨くことができ、ミスを犯すことなく自信を持って訓練を受けることが可能になります。
また、ARを活用することで、遠隔地からの教育やトレーニングも可能になります。これにより、地域による医療格差による問題の解決が期待できます。特に地方や発展途上国では、医療リソースが限られている場合が多く、ARを活用することで、質の高い医療教育を提供することが可能になります。
手術サポート
手術の際にARゴーグルを使用すると、外科医が患者の体内を見ることなく手術を行うことができます。
また手術中に必要な情報をリアルタイムで提供してくれるため手術の質が更に向上します。
さらに、ARは教育ツールとしても重要な役割を果たし、医学生や研修医が手術手順を学ぶのに役立つでしょう。
実際の手術を行う前に、ARを用いて手術の流れを何度も確認でき、手術の成功率を高めることが期待できます。さらに、実際の手術と同じ手順を繰り返し行うことで、手術の技術を磨くことができます。
新人医師が手術を行う際のストレスを軽減し、成功率を向上させることにも役立つでしょう。
医療業界のAR実際の活用事例3選
医療業界の「手術におけるARの活用」「研修・教育」「遠隔医療」の分野において実際にARを活用している事例をご紹介します。
手術におけるARの活用
マイクロソフトは、AR技術を用いた手術支援システム「Microsoft HoloLens」を開発しています。このシステムは、患者のCTやMRIなどの画像データをARで表示することで、手術部位を正確に把握することができます。
研修・教育
「HoloAnatomy® Software Suite」では3D化された人体の臓器や体の構造を理解することができます。
人体を使う必要がないだけでなく、神経系など目では見づらい部分を視覚化できます。
「HoloAnatomy® ソフトウェア」を使用すると、従来の解剖と比べて学生は 解剖学を2 倍の速さで学習でき、記憶力の定着もよいことが実証されています。
遠隔医療
イギリス発の「Proximie」はAR手術支援システムとして遠隔医療を支えています。このシステムは、手術時に支援を必要とする外科医に対して遠隔地にいる医師が患者の状態をリアルタイムで確認しながら適切な治療指示を行うことができます。
AR技術は、医療業界に大きな変革をもたらし、今後も様々な分野でAR技術の活用が進むことが期待されています。
まとめ
AR技術は、医療業界に様々なメリットをもたらす大きな可能性を秘めています。今後、医療従事者や患者にとって、AR技術がより身近なものになるでしょう。
ARは医療業界において、診断から治療、教育まで様々な領域で活用され医療サービスの質を高めることが期待されています。ARは医療の未来を形成する重要な技術として今後その活用はさらに増えることでしょう。
AR技術はまだ発展途上であり、その可能性は無限大です。これからの医療業界におけるARの可能性は、診断技術の進化、手術の精度向上、医療教育の質の向上など多岐に渡り今後の活躍に注目が集まっています。