大学の運営や授業にAR技術を取り入れる⁉メリットや事例も徹底解説
AR(拡張現実)は、大学の教育やイベント、広報活動などで幅広く活用されています。この記事では、大学関係者でもARの利用方法やメリットが理解しやすいように解説します。
オンライン授業の普及やARデバイスの普及など、背景から具体的な活用方法、メリット、実際の事例まで幅広く紹介します。
大学でARが活用できる
大学において、AR(拡張現実)がますます注目されています。その利用は多岐にわたり、さまざまなニーズに応えることが期待されています。その背景には、いくつかの要因があります。
大学でのAR利用の需要が高まっている背景
大学において、AR(拡張現実)の利用がますます増えています。
大学内でのARの需要が高まっている理由には、主に2つの要因が挙げられます。
コロナウイルスによるオンライン授業の導入と普及
新型コロナウイルスの影響により、多くの大学がオンライン授業を導入しました。
オンライン移行への対応や実験・実地授業などの難しさから、生徒も教師も授業の進行や内容を理解するのに、多くの課題が生じていました。
しかし、「オンライン授業」という手段が増えたことで、オンラインが自宅学習に活用され始め、デバイスを通じた授業も定着しはじめてきたことが背景の1つです。
AR技術を手軽に利用できるデバイスの普及
近年、AR技術を利用するためのデバイスが普及しています。
これにより、多くの生徒がARを手軽に利用できる環境が整い、大学でのAR利用のニーズが高まっています。
大学でARを活用する方法
企業や地域のPR、イベントやゲームなど、あらゆるAR(拡張現実)技術の利用がますます増える中、大学は様々な方法でARを活用しています。
ここでは、大学でのAR活用の具体的な方法について探っていきます。
大学のプロモーションに利用する
大学の魅力を伝えるために、
- オープンキャンパス
- キャンパスツアー
などのイベントに、ARを導入することが注目されています。
オープンキャンパス
大学のオープンキャンパスでは、ARを活用してスタンプラリーなどのイベントを開催し、参加者の興味を引きつける取り組みが行われています。
参加者はARを使ってキャンパス内を巡り、各所で特定の場所や物を見つけることで、スタンプを集めるという企画です。
これにより、キャンパス内のことを知れるだけでなく、回遊率を上げたり、コミュニケーションをとって楽しんでもらえます。
キャンパスツアー
大学のキャンパスツアーでは、ARを用いて3Dモデルを表示することで、参加者が建物や施設をより身近に体験できます。
このツアーは大学の現地にいる人だけでなく、インターネット上でも行えるのが魅力です。
大学の施設や設備に対する理解を深めるだけでなく、まるで大学にいるような感覚になれることから、多くの人に学校の魅力をより効果的に伝えられます。
ARを研究や授業に利用する
大学でのARの活用として、イベントやPRだけではありません。
最近では、ARを教育や研究の場にも取り入れる試みが行われています。
ここでは、具体的な導入事例を見ていきましょう。
ARで3Dモデルを表示した授業で理解の質をあげる
授業において、ARを活用して
- 解剖図や建築の図面
- 数学の図形
- 過去の土地の映像
などを、3Dモデルとして表示してイメージしながら学べます。
こうして、従来の平面的な教材ではなく、立体的な情報を視覚的に理解できる学び方が広まっているのです。
ARの活用により、理解の質を向上させ、授業の効果を高めることが期待されます。
新しい研究議題にする
一部の大学では、AR技術を研究の対象として取り入れています。
例えば、ARを利用して新たな教育方法や学習支援システムを開発する研究が行われています。また、ARが人間の行動や認知に与える影響など、AR技術そのものに関する研究も行われています。
こうした取り組みは、大学の研究活動を活性化し、新たな知見を生み出すことが期待されます。
学内イベントに利用する
大学内での様々なイベントにおいても、AR技術が活用されています。
学園祭や入学式・卒業式など、大学生活の中での重要なイベントにARを取り入れることで、学生や多くの参加者に新しい体験を提供できます。
学園祭にAR技術を取り入れる
学園祭などのイベントにおいて、AR技術を活用して様々な体験や展示ができるようなあらゆる工夫がなされています。
例えば、
- ARを使ったゲームや体験コーナーを設置
- キャンパス内をスタンプラリーできるARイベント
- フォトスポットにARを活用して思い出作り
- 学生自身がARコンテンツを作成するイベント
など、参加者があらゆるAR技術で楽しめます。
最新のAR技術に触れることで、大学への意欲が高まったり、参加者の創造性や技術力の向上にも貢献しています。
また、コロナ禍などで混雑が予想される場合でも、ARを利用することで、安全かつスムーズなイベントの運営が可能になります。
入学式・卒業式にARフォトスポットを導入する
入学式や卒業式などの大規模なイベントでは、ARを活用して特別なフォトスポットを設置するのもおすすめです。
参加者はAR技術を使った特別な写真撮影ができ、思い出をより深く残せます。
大学でARを活用するメリット
大学においてARを活用することには、多くのメリットがあります。ここでは、大学側や生徒、大学を志望する人々にとってのメリットに焦点を当てて見ていきましょう。
大学側から見たメリット
大学側がARを活用することによるメリットとして、以下のような点が挙げられます。それぞれのポイントについて、具体的な利点や理由を探ってみましょう。
ARは話題性・拡散性が期待できるためより多くの生徒の獲得が見込める
ARを導入することで、大学の知名度や魅力が向上し、多くの生徒を集められます。
ARは近年の新しい技術です。
そのため、AR自体が話題となるため、大学の広報やマーケティングにとても効果的です。
また、ARはデバイスがあれば利用できるため、国内外のどこからでもアクセス可能であり、全国各地の生徒の獲得範囲が広がると見られています。
特別な機材を用意する必要がないので低コストで導入できる
従来のVR技術と比べて、ARは特別な機材を必要としません。
- スマートフォン
- タブレット
- パソコン
などの一般的なデバイスがあれば利用できます。
そのため、大学側は追加の機材購入や設備投資をする必要がなく、低コストでARを導入できます。
行動データの取得によるマーケティング効果が期待できる
ARを利用することで、参加者の行動データを収集することが可能です。
例えば、
- ARコンテンツへの参加人数
- 各個人がどの場所を訪れたか
- どのコンテンツが人気だったか
などのデータを収集できます。
これにより、大学側はより効果的なマーケティング戦略を立てられます。
生徒や大学を志望する人から見たメリット
一方で、生徒や大学を志望する人々にとっても、ARの活用は多くの利点があります。彼らにとってのメリットを探ってみましょう。
遠方からもキャンパスツアーに参加できる
ARを活用したキャンパスツアーは、遠方からの生徒や訪問者にとって特に有益です。
ARを使えば、リアルなキャンパスの雰囲気や施設をリモートで体験することが可能になります。
これにより、距離の壁を感じずに大学の雰囲気を知ることができ、入学を考える動機付けにもつながります。
実際に経験することが難しい実験を経験できる
多くの大学で、理系の学生が実験を行う機会は限られています。しかし、ARを用いることで、実際に行うことが難しい実験を仮想的に体験できます。
例えば、危険な化学実験や高額な装置を必要とする物理実験など、ARを活用すればリスクやコストを抑えながら学生が実験を行うことが可能です。
ARを用いた新しい分野の研究ができる
AR技術は多岐にわたる分野で活用されており、新たな研究分野を開拓できます。例えば、ARを用いて歴史的な建造物や遺跡の再現、文化財の保護、心理学や教育学などの分野での応用などが考えられます。
これにより、大学はほかの機関との競争力を高めるだけでなく、学問の発展にも寄与できます。
以上のように、大学側と生徒や大学を志望する人との両方にとって、ARの活用は様々なメリットをもたらすことが期待されます。
ARを上手に導入し活用することで、大学コミュニティ全体がより魅力的で効果的な学習環境を構築することが可能です。
実際に大学でARが活用された事例
大学の運営においてARが活用された事例と授業や実験で活用された事例を見てみましょう。
以下に5つの事例を挙げ、それぞれの実施内容と効果、成果について述べます。
事例1: カリフォルニア大学バークレー校(米国)
カリフォルニア大学バークレー校では、建築学科の学生がARを活用して建築デザインの授業を受けています。学生たちは、実際の建築物のデザインや構造をARで仮想空間に表示し、リアルタイムで変更や修正できます。
これにより、学生たちは建築物の設計プロセスをより直感的に理解し、創造的なアイデアを実現できました。学生が作成したARによる建築デザインは、建築業界でも高く評価されています。
事例2: 東京大学(日本)
東京大学では、医学部の学生が解剖学の授業にて、ARを利用しています。従来の解剖学の授業では、解剖模型や図解を使用していましたが、ARを導入することで、学生たちは身体の内部構造をより立体的に理解できます。
特に、手術シミュレーションなどの実践的な授業にてARを活用することで、学生の技術向上に貢献しています。また、ARを使用した解剖学の授業は学生から高い評価を受けており、授業の満足度が向上しています。
事例3: ロンドン大学(英国)
ロンドン大学では、学内イベントで『StoryTrails』のARを活用しています。
没入型ストーリーテリングを導入し、バーチャル空間にて3Dの立体地図を手掛かりに、イギリスの街で歴史を学べるといったものです。
これらはすべて無料で提供されており、ARやVRを活用し、イギリスの歴史や映画に興味を持ってもらいたいと取り入れられました。
事例4: ドイツ工科大学(ドイツ)
ドイツ工科大学では、エンジニアリング系の学生がARを活用して実験を行っています。例えば、機械工学の授業では、ARを使用して機械部品の組み立て手順を学べます。
実際の機械部品をARで表示し、学生が手元で操作しながら組み立てることで、実践的な技術を身に付けられるように工夫されています。このような実験を通じて、学生の技術向上や実務経験の獲得を試みています。
事例5: 上海交通大学(中国)
上海交通大学では、電子工学の授業でARを活用しています。電子回路やデバイスの動作原理を理解できるプログラムになっています。従来の教科書や図解では難解だった理論を、ARを活用することで、より直感的に理解できることが期待されています。また、学生がARを活用した電子工学の実験を行うことで、技術の応用能力や発想力の向上にも繋がっています。
まとめ
大学でのARの活用は、教育やイベント、研究活動など様々な場面で行われています。ARを活用することで、学生の学習効果や技術力向上、大学の広報効果など、多くのメリットが得られます。さらに、AR技術の発展により、今後も大学での活用がさらに進展していくことが期待されます。