近年、VRの技術進化は著しく、私たちの生活により身近なものになってきました。
不動産業界においては、物件の内見にVRを導入する企業も増え、顧客満足度の向上や成約数増加などの効果につながっています。
「VR導入に興味があるが、自社にどんな効果があるか分からない」
「今の業務からどう変わるのか分からなくて、不安がある」
「そもそもVRに詳しくないから、取り扱いできるか心配」
そんなふうに、導入に悩むご担当者様も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産業界におけるVR導入について、メリットやデメリットを詳しく解説します。
VRの基本的な仕組みと具体的な活用事例もご紹介しますので、VR導入の参考にされてください。
まずは、VRはどのようなものか詳しく解説していきます。
VRを導入するにあたって、VRの構造を簡単に把握しておきましょう。
VRは「Virtual Reality(バーチャルリアリティー)」の略で、日本語で「仮想現実」を意味しています。
2010年代から、その技術や活用方法が一般社会でも見聞きされるようになり、2024年現在はさまざまな分野で実用化されるようになりました。
VRといえば、「ゴーグルを装着して映像を見る」というスタイルのイメージをもつ方も多いのではないでしょうか。
専用のVRゴーグルでは、両目の前にディスプレイが1つずつあり、左右それぞれの目の角度に合わせた2D映像が映し出されています。
これは、私たちが「リアルの世界で物を見る」状況を再現しています。
さらに、頭の動きに合わせて映像もリアルタイムで動かし、VR内の視界も連動させます。
上を向けば頭の上に、くるりと回れば回転の動きに合わせた映像が視界に展開されるといった具合です。
このように、VRゴーグル内では「リアルの世界で物を見る」感覚が高度に再現されています。
そのため、実際には何もない空間でも、VRゴーグル内の映像があたかも目の前に広がっているかのような体験ができるのです。
最新のVR技術では、視覚にくわえて聴覚や触覚などを通して、よりリアルな体験を提供することが可能になっています。
映画やアトラクションなどでは音響効果はもちろん、映像に合わせて座席を動かしたり風が吹いたりといった演出も導入され、話題になりました。
視覚だけでなく、聴覚やバランス感覚も刺激し、よりリアリティーのある体験ができる演出が取り入れられています。
「VR」と「メタバース」は、どちらも仮想世界に関係したワードですが、まったく違うものです。
簡単にいうと、メタバースは仮想世界そのもので、VRは仮想空間を体験できる技術を指しています。
メタバースは「超越(meta)」と「宇宙(universe)」を合わせた造語です。
インターネット上の仮想世界を意味しており、ユーザーはアバターを操作して仮想世界内で活動ができます。
ゲームや買い物、ほかのユーザーとのコミュニケーションも可能で、「現実とは違う自分(アバター)が存在する、もうひとつの世界」です。
「あつまれ!どうぶつの森」などのゲームの世界をイメージすると、分かりやすいかもしれません。
一方でVRは、前述したように専用のゴーグルやヘッドセットなどを用いて仮想空間に入り込む技術のことです。
つまり、「VRはメタバースを形成する技術のひとつ」という位置づけになります。
不動産業界では、人が活動や生活の拠点として利用する“物件”を取り扱っているため、視覚効果を用いた情報提供は欠かせません。
売買でも賃貸でも、物件の写真すら確認せずに契約を進める顧客はほとんどいないでしょう。
顧客の判断に大きく影響を与える視覚情報に、2Dの図面や写真、説明書きだけではなく、「立体的に疑似体験できるVR」を用いることで、どのような変化があるのでしょうか。
VRを導入することのメリットとデメリットを確認することで、その効果が見えてきます。
不動産業界において、VRは主に物件の内覧で活用されています。
まずはVR内見を導入するメリットについて、詳しく確認していきましょう。
物件のVR内見ができることで、業務効率は大幅にアップします。
具体的には、次のような効果が期待できるためです。
VR内見をすることで、顧客は図面や写真などに比べて物件を細かいところまで見ることができます。
現地に足を運ばなくても、気に入った物件をより効率よく絞り込めます。
これにより、現地に足を運んで内見する回数が減ることから、営業担当者の顧客対応時間を大幅に削減できる点は事業者にとって大きなメリットです。
物件のVR内見を活用すると、物件の気になる詳細まで確認できる360度映像を活用できます。
これにより、物件の不明点を減らせることから、顧客からの問い合わせや対応にかかるリソースの軽減も見込めます。
例えばコンセントの位置などの細かい部分や全体の雰囲気など、従来の図面や写真だけではイメージし辛いことは多々あります。
顧客からの問い合わせの際に手元の資料だけで回答できない場合は、担当者は現地まで確認に行かなければなりません。
内容によっては、写真撮影や書類の作成も必要です。
VR内見は細かい情報まで伝えることで顧客の疑問や不安や疑問を解消し、事業者や担当者の負担を大きく削減します。
また、従来の内見スタイルと比べると、遠方に住む顧客への物件紹介もスムーズになるでしょう。
VR内見は、営業担当者だけでなく、顧客にも多くのメリットがあります。
従来の内見スタイルは、営業担当者とともに1日に何件も物件を回り、そのたびに各部屋や周りの環境を確認…と、時間も労力も必要でした。
移動と確認作業で疲れ切った状態で契約、また、「色々見すぎて、結局決められない」といった顧客もいたはずです。
VR内見を活用することによって、実際に内見する物件を絞っておけると、顧客にとっても時間の削減になります。
詳しく見る箇所も、VR内見で気になった部分や映像にはない部分を確認する程度になるので、当日の負担も減らせます。
VR内見によって事前に物件を選定することで、当日の内見が効率よく進み、契約締結までの流れがスムーズです。
ストレスの少ない営業によって、担当者との良好な関係を築け、成約率や顧客満足度の向上につながります。
「空室になる予定だけど、現在は入居者がいるため内見ができない。」
VR内見は、そんな状況のときにも役立ちます。
現状で入居者がいる場合でもVR内見で詳細を見てもらえるため、機会損失を抑える有効な方法です。
早期契約の可能性を高め、空室期間の削減に貢献します。
VR導入において、顧客と不動産担当者の双方に大きなメリットがある一方で、デメリットも事前に把握しておくことは重要です。
VR内見のデメリットや、VRを活用する際の注意点も確認しておきましょう。
VRは物件の詳細を伝えられますが、VR内見だけでは確認できない部分もあります。
上記のように映像だけでは分からない事柄も多くあるため、注意喚起は欠かせません。
現地での説明など、顧客へのサポートが必要です。
次に、実際に業務にVRを取り入れた不動産企業の事例をご紹介します。
どんな形でVRを活用し、それによってどんな効果が出たかを解説するので、自社のVR導入の参考にされてください。
株式会社Good不動産では、VR内見用コンテンツの作成時に、動画コンテンツも作成し、SUUMOのオプション掲載に使用しています。
詳細まで確認できる動画付き掲載物件は、ユーザーの興味を引くことに成功。
SUUMOでの反響率は、最も数字が上がった店舗で6.8倍、全店平均では4.7倍にアップしました。
VR内見に使用する映像は、専用の内見アプリで撮影しています。
アプリは使いやすく、VRコンテンツの作り方もカンタン。
また、VRコンテンツをもとに動画コンテンツも作成できるため、改めて撮影する手間がありません。
撮影データは現地からクラウドに送信できるため、PCへの移行作業も不要になり、業務の効率化に貢献しています。
大和ハウス工業株式会社では、2020年2月から物件のバーチャルツアーを導入しています。
「完成したばかりの物件を多くの顧客に紹介するツール」として、VRの有効活用を決めたことが始まりです。
その後、コロナ禍の影響もあり、バーチャルツアーは社内外で急速に浸透していきました。
資料請求があった顧客へのメールマガジン配信にて、バーチャルツアーの案内をしたところ、通常の100倍ものアクセスがありました。
自社ホームページでも、バーチャルツアーを掲載しているページはクリック数の伸びがよいため、ホームページの見せ方を見直すきっかけにもなっています。
以前は「来場を促すために、ホームページで多くを見せない」という方針でした。
しかし、バーチャルツアーで物件の詳細を紹介した方が顧客の反響が大きいことがわかりました。
物件に興味をもった人が来場する機会が増えたため、現場での商談もスムーズです。
エルももち株式会社では、不動産売買仲介を中心とした事業を展開しており、バーチャルホームステージング(VHS)を活用したVR内見を導入しています。
バーチャルホームステージングは、仮想空間で家具やインテリアを配置できる機能です。
空室の状態を詳しく確認できることにくわえて、ワンクリックで家具を配置した際のイメージを表示でき、顧客の購入意欲をかき立てます。
充実した情報を届けられるため、売主からも高い評価を得ています。
VR内見とバーチャルホームステージングは、不動産売却で他社と競合した際にも自信を持ってアピールできる強みになりました。
家具やインテリアの配置だけでなく、CGで現在配置されている家具を消せるため、売主のニーズに合わせた資料が作成できます。
VRを導入することで、複数社で競合した際の受託率が約2倍になりました。
物件の詳細をVRコンテンツにすることで、今まで現場に直接足を運ぶ機会のなかった事務職の社員も、物件の情報を詳しく知れるようになりました。
営業担当者と事務担当者で情報の共有ができ、意見交換の機会にもつながっています。
株式会社アップルでは、賃貸仲介業務の効率化を目的としてVRを導入しました。
VR内見の活用で現地への内見回数を減らし、営業担当者の負担を削減することに成功。
さらに、入居予定者向けのVRコンテンツだけでなく、物件オーナーへのリノベーション提案資料としても積極的にVRを活用しています。
VRの可能性を広げる使い方で、多くのメリットを生み出しています。
リノベーション物件を中心に扱うリノッタに掲載するVRコンテンツでは、壁紙の色を変えて撮影した360°画像を採用するなど、さらなる工夫を加えています。
物件オーナーにVRコンテンツを用いてリノベーション提案をしたところ、VR導入前の10倍以上の受注を獲得しました。
リノベーションのイメージや仕上がりを確認できるバーチャルツアーは物件オーナーに好評で、右肩上がりに数字を伸ばしています。
自社のホームページだけでなく、InstagramやYouTubeなどでもバーチャルツアーのリンクを掲載し、集客の幅を広げています。
この記事では、不動産業界におけるVRの導入について、その効果や具体的な活用事例をご紹介しました。
VRは物件の内覧をはじめ、さまざまな形で導入されています。
物件の詳細をリアルに内覧できるVRで、業務の効率化や成約率アップなど多くの効果が期待できます。
効果を最大化するためには、VR導入のメリットとデメリットをよく理解し、品質の高いVRコンテンツを作成することが大切です。
正確な知識と技術も必要となるため、専門業者に相談することも一つの方法です。
この記事を参考に、自社にとって最適なVR活用法を検討し、よりよいサービス提供を目指しましょう。