近年、ARを導入した様々なサービスが誕生し、AR機能を一度は利用したことがある人も多いのではないでしょうか?
この記事ではARを使った新規ビジネスを考えている人に向けて、ARとはどのような技術で、メリットや導入事例はどういったものがあるのかを解説していきます。
記事を読み終えるころには、新規ビジネスに対してARをどのように取り入れていけばよいかイメージできます。
ここではARとはどんなもので、仕組みや構造がどうなっているのか、ビジネスや事業に活かすことでどんなメリットが得られるのか、解説していきます。
まずはARについて理解を深めるため、
について詳しく解説していきます。
「AR」とは「Augmented Reality」の略で、「拡張現実」という意味です。
ARは現実世界に仮想世界を持ち込むことで、現実世界には存在しないものを居るように見せ、現実を拡張できる技術です。
たとえば、「ポケモンGO」というARゲームでは、スマートフォンを介して現実世界にポケモンがあたかもいるかのように表示し、ボールを投げて捕まられます。
したがって、「AR」とは「拡張現実」を指す言葉として使われているのです。
近年、ゲームにもARを活用できることから、私達にとってARはとても身近な存在になりました。
スマートフォンで遊べるARアプリゲームとして2016年に「ポケモンGO」がリリースされ、爆発的にARが認知されるようになったのは記憶に新しいかと思います。
また、以前はARを体感するには、高価な専用端末や媒体を必要としていました。
しかし、2023年には国内スマートフォン普及率が96.3%となり、手元にあるスマホを使って、誰でも手軽にARを体感できるようになったのです。
こうして、現代ではARは身近な存在として利用できるようになってきています。
AR技術の仕組みや構造を深く理解するため、
について詳しく解説していきます。
ARの1つ目の特徴として、スマートフォンなどのデバイスでモノを認識することにより、ARが起動します。
ARは、マーカー(AR専用の図形)や現実世界の地形にスマートフォンをかざすと、画面上にキャラクターなどのデジタル情報が表示される仕組みとなっています。
たとえば、スマートフォンアプリのSnapchatでフェイスレンズ機能を使用してカメラで撮影すると、相手の顔に犬の耳や鼻を付けた写真や動画を撮ることが可能です。
現実世界にデジタルコンテンツの情報を追加することで、現実世界を拡張することから、ARは現実世界の情報とデジタルコンテンツを紐づけることが可能です。
たとえば「ちいかわARラリー」では、ショッピングモール内に設置されたキャラクターパネル付近に設置されたマーカーを読み込むと、キャラクターと一緒に写真を撮影できます。
このように、ARは現実世界とデジタルコンテンツを紐づけ、現実世界にキャラクターが飛び出してきたかのうような体験ができるのです。
ARの3つ目の特徴は、現実にデジタルデータを活用できることから、デバイスの画面上へ手軽に動物を表示して楽しめます。
たとえば、スマートフォンの「Google検索」で「トラ」と検索して「3D表示」を指定すると、画面上の現実の背景にマッチしたサイズ感で3Dのトラが表示されます。
これにより、目の前にいる距離感で360°トラを観察することができ、動物園で観るのとは一味違った迫力のある体験ができるのです。
ARをビジネスや事業で活かすメリットとして、
などが挙げられます。
自分が所属する業界や業種にARを導入し、業績を伸ばすためのヒントになりますので、詳しく解説していきます。
ARは倉庫内のピッキング作業に活かされており、業務を円滑に進める効果があります。
たとえば、2015年からドイツの「DHL」は「Google」と提携して、ARグラスを使用したピッキング作業員向けのサポートシステムを開発しました。
ARグラスには荷物の移動先が表示されたり、荷物のバーコードがスキャンできます。
これにより、従来の専用端末と紙書類をベースとした作業と比較して、ミスの軽減やスピーディーな作業が可能となり、平均15%の生産性向上につながったのです。
ARは若手社員の早期育成や、業務効率化にも活用できることから、人手不足を解消できます。
たとえば、英国の航空宇宙関連企業である「BAEシステムズ(BAE)」ではマイクロソフトが開発したARグラスの「HoloLens」を使用して、製造現場のトレーニングにAR技術を導入しました。
このトレーニングでは、手元の作業を見ながらHoloLens越しに3Dのマニュアルが表示されるため、従来の紙マニュアルのページをめくる煩わしさから開放されます。
これにより、従来の手法と比較して、トレーニングの所要時間を30~40%短縮し、新製品の生産ライン立ち上げ時に発生する教育や、準備のコストを10分の1まで削減しました。
ARの目覚ましい進化から、目新しさや広告性が高いことから、PRによる集客の向上などにも活かされており、話題性を高めて知名度や売上を上げる効果もあります。
たとえば、アメリカの大手ハンバーガーチェーン店の「バーガーキング」がブラジルで「Burn That Ad」というキャンペーンを行いました。
このキャンペーンでは、バーガーキングのスマートフォンアプリを使って、競合他社のポスター広告などに画面を向けると、画面上に表示された広告が炎上する動画が流れます。
また、炎上させるとバーガーキングの看板商品である「ワッパーミール」の無料クーポンをもらえることで、ライバル店からの乗り換えを訴求しました。
これにより、アプリでの売上が54.6%増加しただけでなく、世界的な広告賞を多数受賞して話題となりました。
ARは新ジャンルのスポーツ創出にも活用できることから、今までにないビジネスに発展できる可能性を秘めています。
たとえば、「株式会社meleap」が企画、開発、運営をしている「HADO」というARスポーツは現在、世界39カ国以上の国々でプレイされています。
HADOはAR技術を使った新感覚のテクノスポーツで、ARゴーグルを用いてエナジーボール(魔法のような球)を対戦相手に当てることで、獲得したポイント数を競う競技です。
これにより、HADOを有料で楽しめるエンターテイメント施設のフランチャイズビジネスを生み出しました。
また、HADOのプロリーグを介したオンライン配信や会場サービスが好調で、2021年から2022年までの売上成長率は750%と急拡大しています。
ARは靴のサイズ測定にも活用できることから、靴屋が近くにない遠方の人がネットで購入する際、店舗へ試し履きしにいくわずらわしさから解放してくれます。
たとえば、世界的に有名なスポーツメーカーの「NIKE」は公式スマホアプリの「Nike app」にて、AR機能を使って足のサイズを誤差2mm以内で正確に測定できる「NIKE Fit」を提供しています。
これにより、靴屋が近くにない遠方の人でも試し履きする必要がなく、ネット通販で完結でき、販売促進による売上拡大が期待できます。
ARは発展途上ながら、スポーツやイベント、観光など多様なビジネスシーンで活用されています。
色々なジャンルでのAR導入事例を知ることで、自分の業界や業種に応用するためのヒントが見つかると思いますので、ご紹介していきます。
ゲームのAR導入事例として「Niantic」が開発した「ポケモンGO」が世界的に有名です。
ポケモンGOはスマートフォンのGPS(位置情報)を使って現実とゲーム世界がリンクし、現実世界を移動することでポケモンを捕まえたり、ポケモン同士を対戦させて遊ぶゲームです。
また、プレイヤーはゲームを有利に進められるアイテムを買うためのゲーム内通貨を現金に交換できます。
これにより、2023年のグローバル収益は8,400万ドルを超え、前月比で39%増加となりました。
ゲームにARを導入した事例として「スクウェア・エニックス」が開発した「ドラゴンクエストウォーク」(以下:ドラクエウォーク)が日本国内で有名です。
ドラクエウォークはスマートフォンのGPS(位置情報)を使って、現実とゲーム世界をリンクさせ、現実世界を移動することでモンスターを倒し、レベル上げや装備強化を楽しむゲームです。
また、ゲームを有利に進めるためのアイテム購入や、装備のガチャガチャを回すためのゲーム内通貨を現金に交換できます。
これにより、ドラクエウォークは2023年1月~12月までの日本におけるAR(位置情報)ゲームの収益3億ドルを記録し、トップとなりました。
店舗イベントへのAR導入事例として、「Dentsu Lab Tokyo」と「株式会社パルコ」が協力して「マツケンARパレード」を開催しました。
マツケンARパレードは2024年1月2日〜14日の期間に実施され、全国のパルコにて、1日限定で観られるARコンテンツやインスタグラムフィルターの配布なども行われました。
イベント告知POPに載っているARマーカー(2次元コード)にスマートフォンをかざすと、画面上の風景にマツケンやロボマツケンが現れ、ダンスを披露して楽しめます。
また、パルコのレストランで配布する4種類の限定コースターのQRコードにスマートフォンをかざすと、画面上の背景にダンスや書道を披露するマツケンが現れ、正月気分を盛り上げてくれました。
これによりSNS上で話題となり、Xを中心に「みんな早く行った方がいい」「縁起がいい」といった声が上がり、マツケンARパレード告知のYoutube動画は140万回再生を超え、大きな反響を呼んでいます。
野球へのAR導入事例として、「ソニービジネスソリューション株式会社」が開発した「顔認識AR技術」が活用されています。
「株式会社広島東洋カープ」が運営する「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」で実施されました。
この顔認識AR技術は、特殊なカメラ2台を使って観客席にいるファンを撮影し、スタジアムのメインモニターにファンを映します。
映し出されたモニター上のファンが手を振る動きに合わせて、ボールのアニメーションやオリジナルの枠デザインを付与する演出強化により、試合を盛り上げます。
バスケットボールへのAR導入事例として「広島ドラゴンフライズ」の「AR選手パネル」が挙げられます。
試合会場に設置されたAR選手パネルにスマートフォンをかざすと画面上の選手が動き出し、一緒に記念写真を取れます。
これにより、試合会場に来たからこそ体験できる価値の創造により、観客の満足度を向上させて熱狂的なファン作りに活かしています。
店舗へのAR導入事例として「カネボウ化粧品」・「パーフェクト株式会社」・「凸版印刷」の3社共同で開発した「TOKYO TWO FACES」が挙げられます。
TOKYO TWO FACESは画面上に写っている顧客の顔や着ている服をもとに、おすすめのメイクや商品の提案をしてくれる端末で、香港のマツモトキヨシコーズウェイベイ店に設置されています。
これにより、店舗に来た顧客がひとりで商品購入の相談ができ、販売促進が期待できます。
店舗へのAR導入事例として「渋谷PARCO」が開催した「MIRAI HANABI in SHIBUYA PARCO」(以下:AR花火)というイベントが挙げられます。
AR花火は、渋谷PARCO 10FのROOFTOP PARKに設置されている専用のQRコードを読み込み、夜景を背景にスマートフォンで手軽に打ち上げ花火を楽しめます。
音楽と光が融合したこのイベントは、著名な音楽家松武秀樹氏の音楽に合わせて光が踊り出し、XRクリエイターKaoru Naito氏が描くキャラクターとともに渋谷の街を舞台に過去から未来へ想いを繋ぎます。
観光へのAR導入事例として「湖南地域観光振興協議会」が開催した「びわこなんの歴史とグルメ街道ラリー」というARスタンプラリーが開催されました。
このARスタンプラリーは湖南4市(草津・守山・栗東・野洲)の対象店舗や施設を巡り、設置されたQRコードにスマートフォンをかざしてARスタンプを集めると、抽選で地域関連商品が当たる、というものです。
これらの取り組みにより、訪れた観光客の周遊性が向上し、各店舗や施設の売上アップが期待できます。
観光にARを導入した事例として「タイムルーパー合同会社」が開発した「AIソリューション」が挙げられます。
AIソリューションはARモバイルアプリにAIを融合することで、スマートフォンの画面上に表示されるバーチャルガイドが複数の言語に対応して観光案内をしてくれるのです。
これにより、観光地の人手不足解消と観光客の体験向上を図ります。
体験型施設へのAR導入事例として、「株式会社amulapo」が制作した「ロケットの打ち上げをARで体験」できるコンテンツが挙げられます。
このARコンテンツは、オオサカホイールで開催された「宇宙万博2022」の施設内にある観覧車に乗りながら、迫力あるロケット発射を体験でき、宇宙飛行士気分を味わえます。
これにより、没入感のあるリッチな体験を提供することで、顧客満足度の向上による販売促進や、売り上げアップが期待できます。
体験型施設へのAR導入事例として「株式会社U.」と「XR City Lab」が制作した「~AR Exibition~ヒカリノコウベ」が挙げられます。
このARコンテンツでは、神戸ハーバーランドにある観覧車にARグラスを装着して乗ることで、海中にいるかのような体験や花火などの光の演出を楽しめます。
これにより、従来のエンターテイメントに新たな付加価値を付与したリッチな体験を提供することで、SNSや口コミによる話題性や集客の増加を期待できます。
日常的に使えるARの導入事例として「パーフェクト株式会社」が開発した「ヘアスタイルシミュレーション」が挙げられます。
ヘアスタイルシミュレーションは、ARにAI技術を組み合わせ、自分の顔で様々なヘアスタイルやヘアカラーを試せます。
これにより、顧客ごとに最適なヘアスタイルやヘアカラーを提案でき、顧客満足度の向上が期待できます。
日常的に使えるARの導入事例として「Google」が開発したGoogleマップアプリの「インドアライブビュー」が挙げられます。
インドアライブビューはAR技術を使った新しいナビゲーション機能で、風景にスマートフォンをかざすと、画面上に目的地までの距離や進行方向を立体的に表示して、従来よりわかりやすくナビゲーションしてくれます。
これにより、従来の平面による道案内と比べて、視覚的にわかりやすくなり、顧客満足度の向上が期待できます。
ARを導入したおもしろい事例として「サッポロビール株式会社」(以下: サッポロビール)と「KDDI株式会社」が開発した「XR Project @YEBISU β.ver」が挙げられます。
このARコンテンツは恵比寿ガーデンプレイスで開催され、設置されたARマーカーにスマートフォンをかざすと、画面上で130年前の恵比寿やビール向上の様子を視覚的に体感できます。
これにより、サッポロビールの人気商品である「エビスビール」の歴史を知ってもらうことで、ブランド価値の向上を図ります。
少し変わったARの導入事例として「PROJECT ATAMI実行委員会」が開催した「湯巡りARスタンプラリー」が挙げられます。
湯巡りARスタンプラリーは、芸術鑑賞と温泉巡りを一緒に行える、一風変わったイベントでした。
熱海の温泉にまつわる7箇所に設置されたARマーカー(QRコード)へスマートフォンをかざすと、芸術作品の動画鑑賞ができます。
動画鑑賞が終わるとスタンプがもらえ、7つすべて集めると抽選でオリジナルグッズがもらえるのです。
これにより、最新技術を融合させた新たな芸術作品の鑑賞と、温泉巡りという珍しい組み合わせの体験が味わえます。
調査会社である「フォーチュン ビジネス インサイト」によると、世界のAR市場規模は2023年に627億5000万ドルとなり、2024年には936億7,000万ドル、2032年までに1兆8,694億ドルにまで成長すると予測されています。
現在、小売業にて服やメガネなどの試着、家具配置のシミュレーションなどにAR技術が導入されています。
そして今後は、より洗練されて効率的な体験の需要が高まることでしょう。
現在、ARを導入している業界はゲーム・メディア・小売・ヘルスケア・製造・不動産など多岐にわたりますが、今後は医療現場の手術や治療に役立てる需要も高まり、AR導入が促進される可能性が大きくなっています。
これにより、ARは発展途上の技術でありながらも、これからさらなる成長や発展が見込まれるでしょう。
ビジネスに活用できるARとはどのような技術やメリットがあり、実際にどのような導入事例があるのか詳しく解説してきました。
昨今、AIの目まぐるしい進化により徐々に従来の働き方が変わりつつありますが、同様にARの技術革新が起きれば私達の仕事への影響も計り知れない可能性を秘めています。
今後もARの動向から目が離せませんね。