「AR」という言葉を一度は耳にしたことがあるかと思いますが、スポーツ業界とどのような関わりがあるのか、イメージできる方は少ないかもしれません。
この記事では、スポーツ業界が好きな方に向けて、スポーツにARを掛け合わせることで、どのような相乗効果が期待できるのか解説していきます。
この記事を読むことで、スポーツ業界にARを導入するメリットや具体的な導入事例がわかり、スポーツ業界の未来がどう変化していくのかイメージできます。
まずARとは何なのか、その技術や仕組みをご紹介します。
その後、スポーツにARを導入するとどんなメリットがあるのか詳しく解説していきます。
ここでは
について、解説していきます。
ARとは「Augmented Reality」の略で、日本語では「拡張現実」という意味になります。
なぜ、ARが「拡張現実」を指す言葉として使われているのでしょうか?
それは、スマートフォンや専用のヘッドセットなどのディスプレイ上に様々なデジタルの情報を追加することで、現実を拡張してくれるからです。
ARの理解を深めるために、ARの技術と仕組みについて「ポケモンGO」を例に解説します。
ポケモンGOはスマートフォンで遊べる世界的に有名なゲームアプリで、ポケモンを捕まえたり、ポケモン同士を戦わせて競うゲームです。
AR技術を導入したことにより、現実世界にポケモンが飛び出してきたかのような高い臨場感のある体験ができるようになりました。
例えば、捕まえたいポケモンや対戦相手と出会うためには、現実世界を歩くなどして移動する必要があります。
その際、スマートフォンのGPS(位置情報)を利用し、現実世界とゲーム内の位置情報を連動させ、ゲームの世界を本当に歩いているかのように感じられるのです。
また、出会ったポケモンを捕まえる際に、スマートフォンのカメラを通じて現実世界を背景にポケモンが表示されることで、現実世界で生息しているかのような臨場感を味わえます。
したがって、AR技術はスマートフォンなどのデバイスを通じて現実世界を拡張させることで、まったく新しい体験を生み出してユーザーを熱狂させられる技術と言えます。
実は、このARの臨場感や体験しているかのような楽しさや熱狂性から、「ARとスポーツは相性がよい」と考えられます。
ARを導入することで
などのメリットが挙げられます。
それでは、各メリットについて詳しく解説していきます。
ARを導入することで、従来のスポーツの楽しみ方とは違った、新しい楽しみ方が増えています。
例えば、韓国のTwohands Interactiveが開発した「DIDIM」。
床に長方形のゲーム画面を投影し、フィットネスをゲーム化することで、運動にゲーム性を付与して、楽しみながら運動できる新感覚のゲームです。
ゲームの種類は数十個あり、特定の場所でステップを踏むとレーシングカーが走ったり、あちこちに現れるモグラを踏んだりして、楽しく運動できます。
このように、AR技術ならではのスポーツ関連の楽しみが増えているのです。
AR技術は野球観戦などで活かされており、臨場感や一体感を高めてくれます。
例えば、福岡PayPayドームでARを使った新しい野球観戦を模索するための、実証実験が行われました。
この実証実験では、ARグラスを介し、観戦席へ向かう通路の途中で球団マスコットキャラのハリーやハニーとのハイタッチを体験でき、気分を盛り上げてくれます。
また、試合中にスタジアム上空へ大きな球団のロゴが投影される、大迫力の演出を楽しむことができ、解放的な気分を味わえます。
ほかにも、推しの選手へメッセージを書いて送ったり、選手名が書かれたボールで応援できるため、より強い一体感を感じられるのです。
AR技術を使った画期的な取り組みを行うことで、話題性作りや広告となることから、新規ファンの獲得や集客につながります。
こうして試合観戦の集客につなげ、来場した観客に喜んでもらうことで、新規ファンの獲得に活かせます。
例えば、Bリーグ(バスケの国内プロリーグ)の一チームである広島ドラゴンフライズが実施した「AR選手パネル」が挙げられます。
このAR選手パネルは試合会場に多数設置されており、スマートフォンのカメラをかざすと画面上で選手が動き出します。
こうして、選手と一緒に記念撮影をしているかのような臨場感のある体験ができ、SNSへの投稿や来場した観客からの反響により話題になりました。
ARは日々進化しており、まだまだ発展途上です。
そのため、多角的な発展の可能性を持っていることから、ビジネスチャンスや新規事業につながる可能性を大いに秘めているジャンルです。
ARはスポーツ業界以外でも、広告業界、地方自治体、不動産業界、金融業界、アパレル業界などにおいても、あらゆるビジネスチャンスを生み出しています。
例えば、大手アパレル通販のZOZOTOWNが開発した「ARメイク」はスマートフォンの画面上に自分の顔を写してメイクを試せます。
自宅にいながら口紅やファンデーション、アイシャドウなど数百点におよぶ製品の組み合わせを試すことができ、Z世代(12~27歳)を中心に購入者が増えました。
このように、EC通販サイトの強化や、在宅消費者の販売促進などにも活用するなど、スポーツ業界でも活かせるサービスが豊富です。
過去にないサービスや斬新な広告、注目されるような新しいイベントなど、思いついたアイデアをビジネスに生かせる可能性が秘められていることから、ぜひARを取り入れてみましょう!
ここでは、ARを活用したスポーツ観戦やスポーツ体験、新たに誕生したARスポーツなどについて詳しく解説していきます。
スポーツ観戦に活用しているARの実例として、
について詳しくご紹介します。
https://twitter.com/itmedia_news/status/1381827005755232260
大手総合電機メーカーのNECと一般社団法人日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ機構)が、バレーボールの観戦価値を創出するため協同しました。
実証実験として試合会場で観戦する際、ARヘッドセットを通じてスコアなどの競技情報や、選手個人のプレー成績などがリアルタイムで観れます。
これにより、参加者30名のアンケート結果で97%が「非常に良い」または「良い」と解答し、高い評価を得ています。
楽天モバイルとJリーグチームのヴィッセル神戸が協力して、新しい観戦体験や付加価値のあるサービス提供のためARの実証実験を行いました。
スタジアムで観戦する際、フィールドにスマートフォンをかざすことで、画面上に試合情報や選手の基本情報が表示できます。
また、ゴールシーンではゴールを決めた選手の写真と名前が表示され、特別な演出により試合を盛り上げてくれます。
ほかにも、スマートフォンに映る選手をタップするとECサイトが表示され、その選手が着用しているユニフォームを購入できます。
これらにより、新しい観戦体験やグッズの販売促進が期待できます。
KDDI株式会社と京都サンガF.C.は、スマートフォンを活用したファンエンゲージメントサービス「AR応援チャレンジ β版」の実証実験を行いました。
スタジアム内でAR技術を活用したスマホゲームを楽しみながら、チームにギフトを贈ることができるこのサービスは、ファンが試合を観戦しながらよりインタラクティブな体験を得られることを目的としています。
スマートフォンでスタジアムのピッチにかざすと、AR演出を楽しみながら選手を応援できるゲームに参加できます。
スタジアム内の参加者がチームに分かれ、対戦形式のシューティングゲームを行います。
試合観戦中のファンエンゲージメントを向上させ、チームへの応援をより楽しくインタラクティブにすることが可能です。
また、スペイン・バルセロナで開催されたモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2024」で、このARサービスのデモ体験ができるブースも出展しました。
ここでは、スポーツ体験や知識が得られるARの実例として、
について詳しくご紹介します。
自動車の製造・販売メーカーであるマツダのレーシングチームが、ファンサービスとしてピットクルーを体験できるARイベントを行いました。
レーシングカーとピットクルーが映し出された巨大なスクリーンの前にファンが立つと、ファンも一緒にスクリーンへ映し出されます。
これにより、ファンがピットクルーの一員としてレースに参加しているかのような臨場感ある体験ができ、多くのファンを喜ばせる企画となりました。
横浜市スポーツ協会(日産スタジアム)と一般社団法人F・マリノススポーツクラブが、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズと共同でARの実証実験を行いました。
実証実験の目的は、横浜F・マリノスのホームグラウンドである日産スタジアムで、新しいスタジアムツアーの可能性を探るためです。
実験内容はスタジアムツアーで巡るベンチやロッカールームにタブレット端末をかざすと、横浜F・マリノスのレジェンド達が画面上に現れて、ここでしか聞けない思い出話が聞けるというものです。
これにより、スタジアムツアーの付加価値の向上が期待でき、一般向けプログラムとしての運用が予定されています。
ここでは、PRや広告にARを活用する実例として、
について詳しくご紹介します。
「株式会社STYLY」はARグッズの制作・紹介・販売を行っている企業で、グッズにARを用いることで、ユーザーとの継続的なコミュニケーションを可能にします。
例えば、キャラクターが描かれたTシャツにスマートフォンをかざすと、画面上に「ととのったーっ!」とサウナにまつわるセリフが表示されます。
また、キャラクターのアクリルスタンドにスマートフォンをかざすと、画面上に表示されたキャラクターがダンスを披露してくれるのです。
こうして、SNSのシェアにつなげてユーザーとの継続的なコミュニケーションを可能にします。
NBAの一チームである「ダラス・マーベリックス」はユーザーの関心を高め、顧客獲得につなげるため、広告のポスターにARを採用しました。
このポスターにはダンクシュートを決めようとしている選手が写っており、スマートフォンをかざすと画面上でダンクシュートを決める動画が観れます。
これにより、ファンのエンゲージメント(ユーザーの参加、関与の指標)を高める効果が期待できます。
ここでは、アスリートの育成に活用できるARトレーニングの実例として、
について詳しくご紹介します。
スポーツの楽しみ方を増やせるARの実例として紹介した「DIDIM」ですが、アスリートを育成するためのトレーニングにも活かせます。
DIDIMを用いて、韓国の17地域が参加する「公共スポーツクラブ基礎体力王大会」を行い、
基礎体力王を選定しました。
楽しく競わせることで、アスリートに必要とされる基礎体力の向上に活かしたり、身体能力が高い人を客観的に選定する効果が期待できます。
「Ghost Pacer」はランナー専用のARグラス(メガネ)で、ARグラスにペースメーカーを立体的に表示して日々のトレーニングをサポートしてくれます。
また、スマートフォンアプリと連携してランニングルートと走行ペースを任意に設定でき、完走タイムを縮めるためのトレーニングに活かせます。
ペースメーカーは他人の走行データも使えるので、友人と競争してトレーニングに臨むといった使い方ができるのです。
したがって、一人でもワークアウトのパートナーと一緒に練習しているかのような体験ができ、競争力の向上が期待できます。
カナダの企業である「FORM」がARを使った次世代のスイムゴーグルを開発しました。
このスイムゴーグルを装着して泳ぐことで、タイムやペース、ストローク数(腕で水をかく一連の動作)などをリアルタイムでレンズ越しに確認できます。
これにより、トレーニングの進捗状況が確認でき、泳ぎに集中できます。
ここでは、新たに誕生したARスポーツの中から、特に有名な「HADO」について詳しくご紹介します。
「HADO」はARを使ったまったく新しいバーチャルスポーツです。
株式会社meleapが開発・提供・運営をしており、日本発祥のARスポーツとして現在、39カ国以上でプレーされています。
HADOのルールは1試合80秒、3対3のチーム戦でエナジーボール(魔法のような玉)を対戦相手に当てることで獲得できる点数を競います。
ファンタジー世界のように魔法を使って戦うような体験ができ、新感覚のスポーツとして話題になりました。
VRスポーツの中でも『HADO Xball』はプロリーグが誕生し、「選手も応援も熱狂できる!」と話題を呼んでいます。
HADO Xballのルールは1試合100秒、2対2のチーム戦でエナジーボールを相手ゴールに入れることで獲得できる点数を競います。
わかりやすい例として、球技に置き換えると、HADOはドッジボール(相手を狙う)、Xballはハンドボール(ゴールを狙う)のようなイメージです。
運営会社は競技人口を増やせばスター選手や人気チームが生まれることで、サポーターが増加してプロリーグが盛り上がると考えているため、選手の募集を行ってます。
また、独特のシステムとして応援タイムを設けており、応援数が多いチームはゲーム内で使える必殺技の使用回数を増やせます。
これにより、ゲームの流れを大きく左右するため観客の応援にも力が入り、選手とサポーターが一丸となって熱狂できるのです。
スポーツ業界にARを導入することで得られるメリットや、具体的な活用方法、導入事例を解説してきました。
元来、スポーツをプレイしたり観戦するのは楽しいものですが、AR技術を掛け合わせることで利便性や面白さを何倍にも跳ね上げる可能性のある未来がイメージできますね。
ARはまだまだ発展途上ですが、ガラケーがスマートフォンへ進化したように技術革新が起こり、我々の生活に劇的な変化をもたらすポテンシャルを秘めています。
今後のさらなる飛躍を期待しながら、自分の環境にどう活かせばより良い未来を実現できるのか、アンテナを張り続けることをおすすめします。